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信州上田の旅と歴史
上田・塩田の旅       上田市(塩田)

前山寺
ぜんざんじ
長野県上田市大字前山300
 寺の歴史は古く、空海上人が護摩修行の霊場として開創したといわれています。今から600年ほど前に、四国の讃岐の善通寺(弘法大師の生まれたところ)から、長秀上人という方がこの寺を大きくしたということです。 
 前山寺参道は、「黒門」といわれている黒色の門の前から三重塔に向かう約150mの間を結んでいます。そこは所々に石段もある広い道です。

 参道の両側には桜や松の大木が周囲5,6mもある樹齢350年前後の欅の大樹と並んで立っています。前山寺参道並木として上田市の指定記念物に指定されています。

 老松の参道を抜けて山門をくぐると目前に三重塔が迎えてくれます。室町末期建築の国の重要文化財です。「未完の塔」とか「未完成の完成塔」といわれています。
「未完」とされるのは、2層目と3層目に欄干や窓がないためです。その簡素さがかえって美しく、人々の共感を呼びました。平安時代に完成した和様と鎌倉時代に伝えられた唐様との調和も見事です。
 二層部分には、柱が四本あります。この柱は、「貫」といわれいます。四本とも下の方から長い板のような角材がつき出ています。これは縁を付けるために突き出したものだそうです。この上に板をはって縁として、そこへ「勾欄」(手すり)をつける予定だったと思われます。

 ところが、何かの事情があったのか、ここには「貫」だけでなにもつけてありません。三層部分もこのような造りになっています。それに一層部分には扉も窓もあるのに、二層、三層にはそれもなく、縁や手すりもないのです。
 塔のつくりからいえばこれでは「未完成」ということになります。

 また、二層、三層部分の柱の上の方を見ますと、どの柱にも両側から切り込みが入っております。これは「長押」というものをつけるための切りこみです。
 しかし切り込みはあっても「長押」はつけてないのです。また柱の上にある「組物」の一部に凸形をしたものが三つ重なっているものがあります。これは「ます」といわれています。
 一番下の「ます」には四角い穴があいています。この穴には「束」という縦の材を入れて、上からの重みを受けなければなりません。
 しかし、この塔は、どの部分のものにもこの「束」がないのです。
 上田の国分寺三重塔なども同様の造り方ですので「束」のないことが「未完成」には当たらないのですが何らかの理由があったのかもしれません。

 前山寺三重塔には未完成のところが多いのですが、その方がすっきりしていてかえって美しいという人が多いので、この塔に「未完成の完成塔」ともいわれています。

 しかし何れにしても何の不調和感もなく、各層の重なり合った美しい曲線、高くそそり立った九輪(頂上近くの輪の九つあるところ)の荘厳さはさすがに名塔の感を深くします。

 カヤぶき屋根の本堂の前には無人の休憩所があり、お茶と梅づけが用意されています。また住職夫人手作りの「くるみおはぎ」(要予約)は、この地方特産のくるみの自然な甘さやまろやかな香りを生かした名物で、味わいたい逸品です。





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